借金はない。
でも、余裕もない。

富谷市の財政を、総務省の統一様式で公表されている「財政状況資料集」の令和元年度から令和6年度まで6冊から読み解きます。借金の重さを示す指標は6年連続でマイナス。それなのに、自由に使えるお金の割合は急速に減っています。

市の公表値から集計
  • 実質公債費比率−1.6%

    借金の重さ。6年連続でマイナス。18%以上になると地方債の発行に国の許可が要る

  • 経常収支比率94.1%

    使えるお金のうち、決まった支出で埋まる割合。自由に使えるのは5.9%

  • 将来負担比率−

    将来の借金負担。5年続けて「算定されない」=返す当てのほうが多い

  • 財政力指数0.75

    自前で稼げる割合。6年で0.83から低下。1未満は交付税を受ける

この2つを並べると分かる

借金は極端に軽く、支出は極端に重い

自治体の財政は、健全化法にもとづく4つの比率で国が見張っています。富谷市はそのどれも危険水域から遠い。ところが、日々のやりくりの余裕を示す指標だけが悪化しています。

健全化判断比率(令和6年度)
  • 実質赤字比率−
  • 連結実質赤字比率−
  • 実質公債費比率−1.6%
  • 将来負担比率−

「−」は該当なし、つまり赤字も将来負担もないという意味です。早期健全化基準(実質公債費比率25%、将来負担比率350%)には遠く及びません。

やりくりの余裕
  • 経常収支比率94.1%
  • 実質収支比率10.7%
  • 公債費負担比率4.0%
  • 財政力指数0.75

経常収支比率は、毎年決まって入るお金のうち、毎年決まって出ていくお金が占める割合です。94.1%は、新しいことに回せるのが5.9%しかないという意味になります。

6年の推移

令和4年度から5年度に、7.4ポイント跳ね上がった

経常収支比率は令和4年度に87.1%まで下がったあと、翌年に94.5%へ一気に上がりました。この段差が、いまの富谷の財政のいちばん大きな変化です。

富谷市の経常収支比率が令和元年度90.8%から令和4年度87.1%まで下がり、令和5年度に94.5%へ跳ね上がったことを示す折れ線グラフ
各年度の財政状況資料集 総括表より作図。令和4年度から5年度の+7.4ポイントが、この6年でいちばん大きい動きです。/制作:富谷トム

経常収支比率の推移

  • 令和元年度 90.8%
  • 令和2年度 91.7%
  • 令和3年度 89.0%
  • 令和4年度 87.1%
  • 令和5年度 94.5%
  • 令和6年度 94.1%
各年度の財政状況資料集 総括表より。バーは80%を起点にしています。80%台なら比較的ゆとりがある、90%を超えると硬直化が進んでいる、というのが一般的な見方です。

表は横にスクロールできます。

年度経常収支比率実質収支比率財政力指数実質公債費比率公債費負担比率
令和元年度 90.8% 7.7% 0.83 -2.0% 7.0%
令和2年度 91.7% 10.0% 0.83 -2.2% 4.0%
令和3年度 89.0% 10.2% 0.81 -2.3% 4.1%
令和4年度 87.1% 15.2% 0.78 -2.3% 4.4%
令和5年度 94.5% 11.6% 0.76 -2.0% 4.1%
令和6年度 94.1% 10.7% 0.75 -1.6% 4.0%

財政力指数だけは6年間ずっと下がり続けています(0.83→0.75)。自前の税収で必要な支出をどれだけ賄えるかを示す数字で、下がるほど地方交付税に頼る度合いが強まります。

中身を数えると

跳ね上がりの中身は、扶助費と物件費だった

経常収支比率は、支出の種類ごとに何ポイント分を占めているかが公表されています。令和4年度と令和5年度を並べると、どこが増えたかがはっきり出ます。

表は横にスクロールできます。

支出の種類令和4年度令和5年度増減令和6年度
扶助費 12.7 17.4 +4.7 17.7
物件費 18.4 21.3 +2.9 18.3
人件費 24.1 23.4 -0.7 24.0
維持補修費 7.7 8.6 +0.9 10.5
繰出金 8.2 8.1 -0.1 8.5
公債費 5.5 5.8 +0.3 5.4

扶助費が+4.7ポイント、物件費が+2.9ポイント。この2つで+7.6ポイントになり、全体の+7.4ポイントをほぼ説明します。人件費と公債費はほとんど動いていません。

扶助費は、生活保護や児童手当、保育、障がい者福祉などに使う経費です。決算額は令和4年度の41億4,880万円から令和6年度は54億96万円へ、2年で30%増えました。物件費は委託料や光熱水費、システム経費などで、令和6年度は39億5,240万円です。

何に使っているか

歳出の4割は民生費。次が教育費

令和6年度の歳出は212億6,548万円。目的別に並べると、富谷という街の形がそのまま出ます。

目的別歳出(令和6年度)

  • 民生費40.3%
  • 教育費17.0%
  • 総務費15.1%
  • 土木費11.6%
  • 衛生費6.8%
  • 消防費3.3%
  • 公債費2.8%
  • 商工費1.1%
  • 農林水産業費1.0%
  • 議会費0.8%
  • 労働費0.3%
災害復旧費と諸支出金は令和6年度の計上がありません。金額は民生費85億6,029万円、教育費36億1,221万円、総務費32億1,190万円、土木費24億5,895万円の順です。

民生費と教育費で歳出の57.3%。子育て世帯が多い街の予算配分としては筋が通っています。いっぽう公債費(借金の返済)は2.8%しかありません。

似た規模の市と比べる

職員の人件費は、類似団体より24%少ない

財政状況資料集には、人口や産業構造が似た「類似団体」の平均が並べて載っています。住民1人当たりの金額で比べると、富谷は人件費も借金の返済も大きく下回ります。

表は横にスクロールできます。

住民1人当たり富谷市類似団体平均差
人件費 54,875円 72,348円 -24.2%
元利償還金(繰上償還を除く) 11,462円 34,344円 -66.6%
公営企業(法非適)への繰出金 1,179円 3,257円 -63.8%
一部事務組合負担金 7,791円 6,364円 +22.4%
合計(人件費・公債費など)65,396円80,912円−19.2%
人口1,000人当たり職員数6.71人

類似団体平均より0.3人少ない

ラスパイレス指数98.3

国家公務員を100としたときの給与水準。類似団体平均より4.5低い

ここが富谷の財政のいちばん独特なところです。職員は少なく、給与水準も高くなく、借金の返済も類似団体の3分の1。それだけ削っていて、なお経常収支比率が94.1%になっています。

裏返すと、これ以上は人件費や公債費で削る余地が小さいということでもあります。扶助費と物件費が増え続ければ、余裕はさらに細くなります。

貯金と借金

基金は減り、地方債は増えている

残高の側も見ておきます。単位は百万円です。

表は横にスクロールできます。

項目令和2年度令和4年度令和6年度令和2→6
一般会計等の地方債現在高6,2186,2117,189+15.6%
充当可能基金9,4879,9139,200−3.0%
退職手当負担見込額1714176543.8倍
財政調整基金—5,0414,884—

それでも充当可能基金(92億円)が地方債現在高(71億9千万円)を上回っているため、将来負担比率の分子は5年続けてゼロで、比率は「−」のままです。ただし差は令和2年度の32億7千万円から令和6年度は20億1千万円に縮んでいます。

いつ議会にかかるか

令和7年度の決算は、9月定例会で審査される

市の決算は、翌年度の9月定例会に「認定」の議案として提出されます。令和8年第3回定例会(9月7日〜25日)には、令和7年度の一般会計・市営墓地・国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療の各歳入歳出決算と、下水道事業会計・水道事業会計の利益処分および決算の認定、あわせて認定第1号から第7号までの7件が出ています。

9月8日に説明と監査報告が行われ、決算審査特別委員会が設置されます。委員会は9月17日と18日。採決は最終日の9月25日です。日程は9月定例会の記事にまとめました。

収録している賛否記録では、令和6年度の一般会計決算と国民健康保険特別会計決算に、それぞれ反対が1票入っています(令和7年第3回定例会)。詳しくは富谷市議会の163議案、反対票は5票だけを見てください。

用語

この5つだけ分かれば読める

用語意味見方
経常収支比率毎年決まって入るお金のうち、毎年決まって出ていくお金の割合低いほど自由に使える。90%超で硬直化とされる
実質公債費比率収入に対する借金返済の重さ(3年平均)18%で国の許可制、25%で早期健全化。富谷は−1.6%
将来負担比率いま抱えている将来の負担が、収入の何倍か350%で早期健全化。負担より財源が多いと「−」
財政力指数必要な支出を自前の税収でどれだけ賄えるか(3年平均)1を超えると地方交付税を受けない。富谷は0.75
扶助費生活保護、児童手当、保育、障がい者福祉などの経費法律で決まる部分が多く、市の裁量では減らしにくい

市も財政用語解説集を公開しています。

この集計で言えないこと

  • 令和7年度の決算はまだ出ていません。この記事は令和6年度決算までです。9月定例会で認定されたあと、財政状況資料集は翌年に公表されます。
  • 経常収支比率が上がった理由の内訳までは分かりません。扶助費と物件費が増えたことは数字で確認できますが、どの事業がどれだけ寄与したかは資料集には書かれていません。
  • 類似団体がどの市かは資料集に列挙されていません。人口と産業構造で総務省が分類したグループの平均です。
  • 財政指標は「危ないかどうか」を測るもので、施策の良し悪しを測るものではありません。扶助費が増えることは、支援が届いていることの裏返しでもあります。

確かめる

使った一次資料

9月定例会で決算が審査される 議会データ 富谷の子どもの数 富谷の高齢化と介護 富谷のハザード

写真:ToshiJapon / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
日吉台中学校。富谷市の歳出で、民生費に次いで多いのが教育費です。
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