富谷市議になるには692票 新人6人中5人が当選

記者:富谷トム・・最終更新 2026年9月20日・読了目安 8分
富谷市総合運動公園へ続く道と、奥に見えるスポーツセンターの建物
富谷市総合運動公園。市議選に立候補するために必要な費用を扱った記事です。この施設が会場になるという意味ではありません。/写真:cora_cola 茶々丸 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
この記事の目次

富谷市議会議員選挙に立候補するには何が必要で、当選すれば何を受け取るのか。条例、公職選挙法、過去の選挙結果から整理しました。金額は2026年8月17日時点の条例によります。

2023年8月の富谷市議会議員選挙は、無投票で終わりました。定数18に対し、届け出たのは18人。富谷市の有権者は、市議を一人も選んでいません。

かつてはそうではありませんでした。2011年には20の議席に30人が挑み、10人が落選しています。

富谷市(町)議会議員選挙 定数と立候補者数

当選(定数)落選
  • 2007年定数20・無投票当選2020人
  • 2011年定数20当選20落選1030人
  • 2015年定数20当選20落選929人
  • 2019年定数18・落選3当選1821人
  • 2023年定数18・無投票当選1818人
棒の全体が立候補者数、濃い部分が当選(=定数)、薄い部分が落選です。2011年は20の議席に30人が挑み、10人が落ちました。2023年は18の議席に18人しか出ず、落選者はゼロです。定数は2007〜2015年が20、2019年以降が18。定数の減り方(20→18)より、立候補する人の減り方(30→18)のほうがはるかに速いことが分かります。出所:選挙ドットコム掲載の各選挙結果

当選ラインは692票

どれだけ票を集めれば当選するのか。最後に選挙が行われた2019年の結果が、その答えです。

2019年8月25日 富谷市議会議員選挙の得票(定数18・21人立候補)

  • 1位 わたなべ 俊一現職・当選1,501票
  • 2位 きくち みほ新人・当選1,484票
  • 3位 あさの 直子現職・当選1,260票
  • 4位 長谷川 るみ現職・当選1,231票
  • 5位 若生 ひでとし現職・当選1,128票
  • 6位 菅原 福治現職・当選1,114票
  • 7位 あおやぎ 信義現職・当選1,018票
  • 8位 安住 としゆき現職・当選1,016票
  • 9位 出川 ひろかつ現職・当選987票
  • 10位 はたやま 和晴現職・当選966票
  • 11位 佐藤 ひろたか新人・当選877票
  • 12位 村上 おさむ新人・当選872票
  • 13位 金子 とおる現職・当選855票
  • 14位 浅野 つよし現職・当選726票
  • 15位 塩田 ちあき新人・当選714票
  • 16位 藤原 しゅん現職・当選710票
  • 17位 わたなべ 清美新人・当選694票
  • 18位 高橋 まさとし現職・当選692票
  • 19位 斉藤 秀行現職・落選687票
  • 20位 伊藤 よしき新人・落選654票
  • 21位 山路 清一現職・落選621票
18位で当選したのは692票、19位で落選したのは687票。差はわずか5票でした。投票率は48.72%。21人が立候補して18人が当選したため、当選確率は85.7%にのぼります。氏名は選挙管理委員会への届出表記によります。出所:選挙ドットコム

新人6人のうち5人が当選

現職が強く、新人には手が届かない。そう思われがちですが、2019年の結果は違います。

立候補した21人のうち新人は6人。うち5人が当選しました。落選した新人は1人だけです。

2019年 新人候補の結果

候補 得票 順位 結果
きくち みほ 1,484票 2位 当選
佐藤 ひろたか 877票 11位 当選
村上 おさむ 872票 12位 当選
塩田 ちあき 714票 15位 当選
わたなべ 清美 694票 17位 当選
伊藤 よしき 654票 20位 落選
2位で当選したきくちみほ氏は、当時31歳の新人でした。選挙ドットコムの掲載では職業欄は「家事手伝い」。政治経験や組織がなければ勝てないという前提は、この選挙の結果には表れていません。落選した伊藤よしき氏も、次の2023年に当選しています。出所:選挙ドットコム

一方、落選した3人のうち2人は現職でした(斉藤秀行氏687票、山路清一氏621票)。現職であることが当選を約束するわけでもありません。

692票という数字を、別の角度から見てみます。2019年の得票合計は1万9807票でした。当選ラインは、投票した人のおよそ3.5%にあたります。

富谷市の行政区でいえば、あけの平三丁目に1479人、上桜木一丁目に1708人が住んでいます。ひとつの団地で顔と名前を覚えてもらえば、届く数字です。

費用は思われているより小さい

供託金30万円は、111票で戻る

市議会議員選挙の供託金は30万円です(公職選挙法第92条)。没収されるお金ではなく、一定の票を得れば全額返還されます。

没収されるのは「有効投票総数 ÷ 定数 ÷ 10」に届かなかった場合です。2019年の数字で計算すると、1万9807 ÷ 18 ÷ 10 で110.04。つまり111票を得れば供託金は戻ります。2019年は最下位の候補でも621票を得ており、21人全員に返還されています。

車もビラもポスターも公費

富谷市には選挙運動の公費負担条例があります。供託金が没収されない候補者は、次のものを無料で使えます。

項目 公費で負担される上限
選挙運動用自動車 1日6万4500円(一般運送契約の場合)。選挙期間7日で45万1500円まで
自動車の借り入れ 1日1万6100円まで(運送契約によらない場合)
燃料 1日7700円まで
運転手の報酬 1日1万2500円まで
選挙運動用ビラ 1枚8円38銭まで
選挙運動用ポスター 「586円88銭 × ポスター掲示場の数 + 31万6250円」の範囲

出所は富谷市議会議員及び富谷市長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例(令和元年条例第14号)。選挙カーを走らせ、ビラを刷り、ポスターを貼る費用は、条例の上限まで市が負担します。ポスター掲示場の数は選挙ごとに選挙管理委員会が告示するため、総額はその年によって変わります。

制度を使うには、業者と有償契約を結び、選挙管理委員会に届け出る必要があります。手続きを踏まなければ公費は出ません。

報酬は月36万6000円

議員報酬は条例で定められています。

区分 議員報酬月額
議長 47万1000円
副議長 38万9000円
議員 36万6000円

期末手当について、条例は「期末手当基礎額は議員報酬月額にその額に100分の15を乗じて得た額を加算した額とし、期末手当基礎額に乗ずる割合は100分の175とする」と定めています(同条例第5条第3項)。

議員の場合、36万6000円 × 1.15 で42万900円が基礎額。これに1.75を掛けた1回73万6575円が支給額です。期末手当が6月と12月の年2回支給されるという一般的な前提で計算すると、次のようになります。

富谷市議会議員の年収(試算)

議員報酬439万2000円

36万6000円 × 12か月

期末手当147万3150円

73万6575円 × 年2回

合計586万5150円

退職手当はありません

支給回数は条例に明記がないため、年額は試算です。月額と計算式は条例に書かれた確定値です。市長や副市長には退職手当がありますが、議員には退職手当の定めがありません。このほか、公務で旅行した場合に費用弁償(旅費)が支給されます。

会議は年27日

議員は忙しいのか。推測ではなく、会議録で数えられます。令和7年に富谷市議会が開いた会議は次のとおりです。

令和7年 会議録が公開されている会議の日数

  • 第1回定例会2月20日〜3月14日6日
  • 第2回定例会6月12日〜6月23日4日
  • 第3回定例会9月2日〜9月19日6日
  • 第4回定例会11月28日〜12月10日4日
  • 第1回臨時会1月16日1日
  • 第2回臨時会5月16日1日
  • 予算審査特別委員会3月10日〜12日3日
  • 決算審査特別委員会9月12日・16日2日
本会議が22日、特別委員会が5日で合計27日です。出所:富谷市議会会議録検索システム。ただしこれは会議録が公開されている会議に限ります。3つの常任委員会、議会運営委員会、全員協議会の会議録は同システムに掲載されておらず、日数を確認できません。実際の活動日数はこれより多くなります。

仕事を続けながら務められるか

結論から書けば、会社員や自営業を続けながら市議を務めることは、法律上できます。ただし制限があります。

  • できないこと市に対して請負をする者や、その支配人などは議員になれません(地方自治法第92条の2)。市から工事や業務を受注している会社の経営者は該当する可能性があります。
  • できないこと国や地方公共団体の公務員との兼職はできません(地方自治法第92条第2項)。
  • できること上記に当たらない会社員、自営業、農業、専門職などとの兼業は禁じられていません。

自分の仕事が該当するかどうかは個別の判断になります。迷う場合は市の選挙管理委員会に確認してください。立候補の相談を受け付ける窓口です。

あわせて知っておくこと

ここまでの数字だけを見れば、立候補のハードルは低く映るかもしれません。公平を期すため、この記事が示せていないことを挙げます。

  1. 常任委員会の日数が分からない 会議録が公開されていないため、年27日という数字には含まれていません。
  2. 記録に残らない仕事がある 地域の会合、相談への対応、視察、資料を読む時間。会議録には出てきません。
  3. 公費でまかなえない費用がある 事務所、電話、人件費、後援会活動。公費負担の対象は自動車・ビラ・ポスターに限られます。
  4. 2019年の当選ラインが次回も同じとは限らない 立候補者が増えれば、ラインは上がります。

出てみませんか

数字を並べれば、こうなります。

  • 供託金30万円は111票で戻る2019年は21人全員に返還されました。
  • 選挙カーもビラもポスターも公費条例の上限まで市が負担します。
  • 前回の当選ラインは692票投票した人の3.5%。ひとつの団地で覚えてもらえる規模です。
  • 新人6人のうち5人が当選2位で通ったのは31歳の新人でした。
  • 仕事は続けられる請負と公務員以外の兼業は禁じられていません。

足りていないのは、おそらくお金でも票でもありません。「自分が出ていいのか」という一点です。

2023年、18の議席に18人しか出ませんでした。19人目がいれば、富谷は選挙をしていました。市政に言いたいことがある人、子育てや介護や通勤で困っている人、この街をもっとよくしたいと思っている人。その一人が出るだけで、市民は選ぶ機会を取り戻します。

次の富谷市議会議員選挙は2027年8月ごろの見込みです(任期満了は2027年9月10日)。実際の期日は選挙管理委員会が告示します。まだ1年あります。

一次資料

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