富谷から泉中央へロープウェイ 市の調査は「敷設が可能」

記者:富谷トム・・最終更新 2026年9月21日・読了目安 5分
明石台から泉ケ岳方面を望む。ススキの向こうに住宅と山並みが見える
明石台から泉ケ岳方面を望む。ロープウェイ構想は明石台と仙台市の泉中央駅を結ぶもので、この写真はルートや設備を示すものではありません。撮影は市制施行前です。/写真:cora_cola 茶々丸 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
この記事の目次

3つの壁と仙台市が求めている4点はロープウェー特集にまとめています。

富谷から仙台市地下鉄の泉中央駅まで、ロープウェイで通勤する。

冗談のような話に聞こえますが、富谷市はこれを本気で調べています。しかも2025年11月、市が公表した調査結果は「敷設は可能」でした。

何を調べたのか

市は令和6年度に策定した「富谷市地域公共交通計画」に基づき、市内と仙台市地下鉄・泉中央駅を結ぶ新たな基幹公共交通の整備を検討するため、都市型自走式ロープウェイの導入可能性調査を実施しました。調査は2025年10月末に完了し、11月21日に結果が示されています。

対象となっているのは「Zippar(ジッパー)」と呼ばれる都市型索道です。報道によれば、次のような特徴があります。

  • 12人乗りの自走式で、自動運転のため運転士を必要としない
  • 整備費は鉄道の10分の1程度とされる
  • 支柱を建てる方式のため用地買収の手間が少なく、建設期間が短い

運転士不足と建設費の高騰という、いま地方交通が直面している2つの壁を同時に避けられる、という発想です。

2つのルートと、かかるお金

調査では2つのルートが検討されました。

検討された2ルートの概算事業費

  • ルート1100億円
  • ルート2147億円
ルート1は泉中央駅から富谷市明石台までの直線で3.45km。ルート2は将監第一団地を経由する経路で4.05km、事業費は約147億円。バーの長さは概算事業費に比例します。出所:khb東日本放送の報道(2025年11月21日)

距離にすると0.6kmの差で、事業費は約47億円変わります。迂回するかどうかは、どの地域を通すかという地元の議論に直結します。

調査結果は「物理的には可能」

報道によれば、調査では次のことが確認されました。

  • 敷設は可能と判断された
  • ルート上の高圧線と干渉しない
  • 採算性も見込めるとの見通し

若生裕俊市長は「物理的には導入可能だということは、次への希望を持って進めるのはうれしい」と述べ、バスを補完する自動運転の基幹交通として位置づける考えを示しています。

ただし、決まったわけではない

ここが重要です。調査で「できる」と分かっただけで、やると決まったわけではありません。今後は国土交通省の認可を待ち、詳細調査と、仙台市との用地に関する協議に進むとされています。

ルートの終点である泉中央駅は仙台市内にあります。つまりこの構想は、富谷市だけでは完結しません。

ここまでの経過

  1. 富谷市地域公共交通計画を策定

    持続可能な公共交通の実現に向けた交通政策の枠組みを定めました。ロープウェイ調査の根拠となる計画です。

  2. 都市型自走式ロープウェイ導入可能性調査を実施

    市内と泉中央駅を結ぶ新たな基幹公共交通の整備検討のための調査です。

  3. 調査が完了

    2ルートについて敷設の可否、高圧線との干渉、採算性が検討されました。

  4. 「敷設が可能」と結果を公表

    ルート1は3.45kmで100億円、ルート2は4.05kmで約147億円との概算が示されました。

  5. 国土交通省の認可、詳細調査、仙台市との協議

    ここから先の日程は公表されていません。認可の動きと市の予算計上を追います。

議会でも問われている

この構想は、市議会の一般質問でも取り上げられています。記録している質問は次のとおりです。それぞれ市議会の録画中継につながっています。

【追記】議会答弁で分かった、その後

2026年3月5日の市議会で、若生市長がこの構想の現在地をより具体的に答弁しました。会議録から要点を補います。

  • 開発事業者は2033年の運行開始を目標にしている。現在、認可取得に向けて国と協議を進めていると市は説明しています。
  • 実証実験は南相馬市で進行中。レール部40メートル区間を市職員が体験試乗し、ロープ部80メートル区間が2026年1月に完成。現在は計120メートルで走行試験が行われています。
  • 仙台市との協議は「副市長間の説明」段階。2025年4月に武内副市長から仙台市の高橋副市長へ調査実施を説明し、11月には調査結果を説明。正式な協議ではなく、進捗の説明を随時行う段階です。
  • 令和8年度に市が行うこと。駅舎および支柱の配置に関するシミュレーション、下水道管など地下埋設物の調査、需要予測に取り組むとしています。
  • 調査報告書が挙げた課題。埋設物等の資料に基づく具体的なルート設計、精度の高い需要予測、それらを踏まえた概算事業費の精査と費用対効果の検討。

「敷設が可能」という結論のあとに残っているのは、この4つの宿題です。とくに需要予測は、採算性の前提そのものにあたります。

出典:令和8年第1回定例会 第4号 本文(2026年3月5日)

報告書が挙げた現場の課題

「敷設可能」という結論の裏で、市の調査報告書は具体的な課題も列挙しています。

  • ルート1(将監トンネル経由) トンネル沿いに支柱を建てるための用地調整と大規模な工事が必要になると見込まれます。明通線の高圧送電線の下を横断する必要もあります。
  • ルート2(将監第一団地経由) 将監幹線7号線沿いの将監2丁目〜4丁目で用地調整が必要です。高圧送電線下の横断に加え、高架道路の横断も課題として残ります。住宅地内を通るため道路幅員が基本的に狭く、市道泉中央将監線は平面曲線と比較的急な縦断勾配が重なります。
  • 両ルート共通 高架道路や明通線高圧送電線との離隔確保、そして景観保全(植樹への対応)。

採算については、上下分離方式、施設部の補助金あり、補助金なしの3パターンで試算され、いずれも単年度の概算事業収支は黒字と判定されています。ただし需要は過年度の「次世代都市交通システム導入可能性調査」で用いられた想定使用者数を活用した簡易検討であると報告書自身が明記しており、次期調査では仙台都市圏の調査に基づく精度の高い需要予測が必要だとしています。

より詳しい整理はロープウェー特集にまとめています。

読者として、何を見ておけばいいか

  1. 市の予算に調査費・設計費が計上されるか。本気度は予算に出ます。当初予算は2月の定例会で審議されます。
  2. 仙台市との協議が始まるか。終点が仙台市内である以上、相手の合意なしには進みません。
  3. 採算の前提となる利用者数。「採算が見込める」という結論が、1日何人の利用を前提にしているかが要点です。
  4. いまのバスがどうなるか。市長はバスを補完する位置づけと説明しています。既存の市民バスの路線や本数がどうなるかは、日々の足に直結します。

一次資料

距離と概算事業費は市の調査結果を伝える報道によります。市の公表資料(PDF)本文の数値と表現は、原本でご確認ください。

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