毎朝1万3918人が仙台方面へ 富谷の交通施策は追いついているか

記者:富谷トム・・最終更新 2026年9月21日・読了目安 5分
富谷ジャンクション付近の自動車道。防音壁の脇を車道がカーブして続く
富谷ジャンクション付近の自動車道(市制施行前の撮影)。毎朝1万3918人が仙台方面へ向かう記事で、通勤の多くは車です。/写真:cora_cola 茶々丸 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
この記事の目次

富谷で働くか学んでいる人は33,753人。そのうち20,035人、59.4%が市外へ出ています。行き先の約7割が仙台市で、その数13,918人。

この人たちが毎朝ほぼ同じ時間に、同じ方向へ動きます。

12.0km/h / 朝夕の旅行速度(仙台泉線・下り)
昼間の非混雑時は19.0km/h。通勤時間帯は自転車と変わらない速度まで落ちます。出所:令和3年度 道路交通センサス

1. 誰が、どこへ動いているのか

富谷と仙台市を行き来する人(平成27年国勢調査)

富谷 働く・学ぶ 33,753人 仙台市 通勤・通学先 13,918人 5,046人 差し引き 8,872人が毎日、市外へ

矢印の太さは人数に比例します。差し引きは公表値から算出。

仙台市の側から見ると、県内からの通勤・通学の流入元で富谷は名取市(16,781人)、多賀城市(14,039人)に次ぐ3位です。名取も多賀城もJRの駅を複数持ちます。鉄道駅のない富谷が、その2市に並ぶ規模で人を送り出しています。

2. その道は、容量を超えている

主なルートは国道4号です。道路交通センサスの混雑度(1.0を超えると容量超過)を、富谷から南下する順に並べます。

国道4号の混雑度(令和3年度)

  • 西成田宮床線〜大和町境富谷市0.99
  • 仙台北部道路〜西成田宮床線富谷市1.01
  • 泉区境〜仙台北部道路富谷市1.26
  • 泉ヶ丘熊ヶ根線〜富谷市境泉区1.34
  • 東北自動車道〜泉ヶ丘熊ヶ根線泉区1.55
  • 仙台泉線〜東北自動車道泉区1.55
  • 仙台三本木線〜仙台泉線泉区1.06
1.00以上の区間は色を変えています。バーの長さは最大値1.55に対する比率。出所:令和3年度 全国道路・街路交通情勢調査 箇所別基本表(宮城県)

富谷市内では0.99〜1.26。泉区に入ると1.55まで上がります。容量の1.5倍を超える車が流れている計算です。

朝夕と昼間の旅行速度(下り・km/h)

  • 国道4号仙台三本木線〜仙台泉線12.5→26.7
  • 仙台泉線泉塩釜線〜国道4号12.0→19.0
左が朝夕(混雑時)、右が昼間(非混雑時)。バーの長さは「朝夕は昼間の何%か」を示します。

市の調査報告書も、県道仙台泉線について「午前・午後の通勤・通学時間帯において、道路渋滞が定常化しており、泉中央駅付近から明石台地区まで移動する際は時間を要する」と記しています。

3. いま動いている施策は、どれくらいの規模か

ここが本題です。13,918人という流れに対して、市がいま実際に動かしている手段はどれくらいの大きさなのか。会議録と公表資料で確認できたものを並べます。

実証済み

とみや公共ライドシェア

32回

2025年11月26日〜12月25日の水〜金、計14日間・4台で実証。アプリ登録134人に対し、利用は延べ46人、運行32回。1台が1日に運んだのは平均0.6回でした。

ただしこれは夜間(18〜24時)の交通空白を埋める試みで、朝の通勤を対象にしたものではありません。利用者の評価は高く、泉中央方面と土日の運行を求める声が多く寄せられました。

運用中

とみぱす

年2万円まで

バス・地下鉄等の運賃を年間2万円まで助成する外出支援乗車証。70歳以上、18歳以上の障がいのある方、そして60歳以上で免許を自主返納した方が対象です。

対象は高齢者と障がいのある方の外出支援であり、通勤・通学の13,918人は対象外です。目的が違う制度です。

2026年4月〜

市民バスの路線再編

4つの改正

路線名を行き先が分かる表記へ変更、西部循環線を上下運行にして乗車時間を短縮、5月開館のユートミヤへの発着回数を増加、太子堂地区から乗り継ぎなしでイオン富谷店へ行ける路線を設定、イオン富谷店の発着を増便。

生活の足としての改善で、泉中央への直通ではありません。既存の乗り継ぎ事業(イオン富谷店で路線バスへ乗り継ぎ、低額で泉中央へ)が通勤向けの受け皿です。

構想段階

都市型ロープウェー

2033年目標

泉中央駅と明石台を結ぶ自走式ロープウェー。調査は「敷設可能」と結論づけましたが、事業費100〜147億円(用地費を含まず)、仙台市との正式協議は未了、国の認可枠組みも未確定です。

2026年6月時点の実証は120mを時速5km。ロープウェー特集で詳しく追っています。

市長は2026年3月5日の市議会で、運賃助成について「まずはこれらの事業の維持に努めてまいりたい」と答弁しています。通勤時間帯の増便については、成田二期西地区・東地区や明石台東二期地区の住宅団地の造成に伴い需要が増えると予想されることから、宮城交通と情報交換を行いながら、必要に応じて増便の要望を行うとしています。

4. ここが論点

  1. 朝のピークに効く手段が、いまの施策の中にないライドシェアは夜間、とみぱすは高齢者・障がいのある方、市民バス再編は生活の足。13,918人の朝の流れに直接効くのは、宮城交通への増便要望と、構想段階のロープウェーだけです。
  2. 増便は「要望」にとどまる路線バスの本数を決めるのは市ではなく事業者です。市ができるのは要望と、必要なら財政的な下支え。どこまで踏み込むのかが示されていません。
  3. 造成が需要をさらに増やす成田二期・明石台東二期の造成は、いまの流れに人を足す方向に働きます。混雑度1.55の道に、さらに乗る人が増えます。
  4. 通勤の数字が11年前のものしかない市町村間の通勤・通学者数を公式に把握できるのは国勢調査の従業地・通学地集計で、県が集計として公表している最新は平成27年です。現状はこれより大きい可能性があります。

5. 政策提言:今ある交通を先に改善する

  • 朝のピークを分けて測る。いまの議論は「泉中央まで何分か」に寄っていますが、問題は時間帯です。市が来年度に取り組むとしている需要予測では、時間帯別の流動を出すべきです。仙台市が求めている「泉中央周辺の交通への影響」も、これがなければ答えられません。
  • 増便の費用を試算して公開する。宮城交通への要望が実らない場合、市がいくら負担すれば何本増やせるのか。ロープウェーの100億円と同じ土俵で比べられる数字を出すべきです。
  • 造成と交通をセットで審議する。宅地造成の許可と、そこから生まれる交通需要への対応を、別々に決めない仕組みが要ります。
  • ロープウェーは「唯一の答え」にしない。実現には仙台市・国・技術の3つが揃う必要があり、2033年まで待つ間の手立ては別に要ります。

一次資料

割合、差し引き人数、1台あたりの運行回数は、上記の公表値から算出したものです。

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